子どもがゲームに熱中する背景には、思春期特有の心理的要因やゲームが持つ本質的な魅力が深く関係しています。わたしたち親としては、ゲームが学業に与える影響や、子どもとの向き合い方について理解し、建設的な対話を通じて、ゲームとの健全な付き合い方を見つけることが重要だと考えます。ちょっと長くなりますので、興味のあるところだけお読みくださいね。
なぜ子どもはゲームに夢中になるのか
ゲームの魅力と心理的要因
子どもがゲームに夢中になるのは、ゲームが提供する「達成感」や「没入感」に強く心を惹かれるからです。現実世界ではすぐに結果が出にくい努力も、ゲーム内ではレベルアップやステージクリアといった目に見える形で報われます。難しいステージをクリアした時の喜びや、キャラクターを育てた時の満足感は、子どもにとって大きな「達成感」と「自信」につながります。また、オンラインで友人と協力したり、競争したりすることも、大きな「刺激」となります。
思春期は、身体の急激な成長に対し、心の成長が追いつかずアンバランスになりがちな時期です。この時期に、「自分はできる」という自己肯定感が揺らぎやすくなります。そのため、頑張ってもすぐに成果が見えにくい勉強に対しては、「どうせやっても無理」と感じ、ゲームのような即、達成感を得られることに没頭しやすい傾向があります。授業中やテストで思うような結果が出なかった時に「勉強しなさい」と言われると、自己嫌悪に陥り、勉強から逃げたくなることもあります。わたしたちは結果だけでなく、子ども自身が気がついていない努力の過程を認め、寄り添う姿勢が大切です。
ゲームが学力に与える影響
メリットとデメリット
ゲームが学力低下に直接的に結びつくとは限りません。
ゲームには子どもの能力を伸ばすポジティブな側面と、学業に悪影響を及ぼすネガティブな側面の両方があります。例えば、戦略性の高いシミュレーションゲームやパズルゲームは、思考力や問題解決能力を養うのに役立つことがあります。ゲームを通じて、子どもは「どうすればクリアできるか」を常に考え、複雑な状況を分析し、仮説と検証を繰り返すため、現実社会での計画性や論理的思考に通じる能力を育むことができます。
一方、長時間にわたるプレイは、睡眠不足につながり、日中の授業に集中できなくなる可能性があります。そのため、ゲームを一方的に禁止するのではなく、良い面を活かしつつ、悪影響が出ないように適切に付き合っていく視点が必要です。
ゲームと言動への影響
思春期の子どもは感受性が豊かで、ゲームの刺激的な世界に強く影響されることがあります。攻撃的なゲームのキャラクターの言動を、ゲームの興奮が冷めないまま現実世界で真似をしてしまう可能性もあります。例えば、ゲームの直後に乱暴な言葉を使ったり、家族に対してイライラした態度を見せたりすることがあります。

このような場合、「やめなさい」と叱るのではなく、「わたしは、乱暴な言葉を聞くと心配になるよ」と「わたし」を主語にして親の気持ちを伝えることが有効です。また、ゲームを禁止するのではなく、子どもが冷静な時に、ゲームの世界と現実世界での振る舞いは違うことを落ち着いて伝え、それについて親子で話し合う時間を持つことが重要です。
ゲーム時間の適切なコントロール
親子で決めるルール
子どものゲーム時間をコントロールしたい!恐らく多くの方の願いだと思います。そのためには、親子で話し合い、お互いが納得できるルールを決めることが不可欠です。親が一方的に制限すると、子どもは反発し、隠れてゲームをするなど逆効果になる可能性があります。まさに、うちがそうでした。
例えば、
「平日は宿題が終わってから1時間まで」「休日は2時間まで」のように、具体的な時間や条件を一緒に決め、そのルールが必要な理由を丁寧に伝えることが大切です。子どもの「やりたい」という気持ちを尊重しつつ、対話を通じて「これなら守れる」と思えるルールを見つけることで、信頼関係が築かれます。
勉強とゲームの優先順位
勉強の前にゲームをすることには、メリットとデメリットがあります。適度なゲームは気分転換になり、その後の勉強への意欲を高めるきっかけとなることがあります。しかし、ゲームに熱中しすぎて興奮状態になり、かえって勉強に集中できなくなる可能性もあります。
子どもの性格やその日の様子に合わせて、例えば、なかなか勉強に取りかかれない子どもには「15分だけゲームをしてから始めよう」と声をかける、一度始めると切り替えが難しい子どもには「勉強が終わってからのお楽しみ」にするなど、集中できる方法を一緒に試行錯誤することが望ましいです。一度でいい方法は見つからない物なので、根気よく、様子を見ながら試してみてくださいね。
1日の適切なゲーム時間は、子どもの年齢や生活リズムによって異なりますが、専門家の間では、学業や睡眠に支障が出ない範囲として「1日1〜2時間程度」を目安にする意見もあります。ただし、重要なのは時間数そのものよりも、十分な睡眠時間や学習時間、家族とのコミュニケーションの時間を確保し、生活全体がバランス良く保たれているかです。まずは子どもの生活リズムを把握し、話し合いを通じて「家庭に合ったちょうど良い時間」を見つけることが大切です。
ゲームで培う能力と学習への活用
思考力・問題解決能力の育成
子どもが夢中になっているゲームは、「思考力」や「問題解決能力」を鍛える場となり得ます。多くの戦略ゲームでは、プレイヤーは課題をクリアするために、複雑な状況を分析し、仮説と検証を繰り返す必要があります。シミュレーションゲームで資源を効率的に管理し都市を発展させるプロセスは、計画性や論理的思考に通じ、まさに問題解決のトレーニングと言えます。親は、子どもが、遊んでいるだけと見るのでなく、「どんなことに興味があるのか」「どうやって課題をクリアしているのか」という視点で観察することで、秘められた才能や可能性に気づくことができます。
勉強に役立つゲームの活用術
ゲームを上手に活用することで、歴史、科学、語学などといった分野の学習意欲を高めることができます。教科書で学ぶ知識が、ゲームの世界ではリアルな体験や物語として描かれることが多く、楽しみながら触れることで知的な好奇心が刺激され、「もっと知りたい」という気持ちが芽生えることが期待できます。
例えば、歴史シミュレーションゲームを親子で一緒にプレイしながら、「この武将はどんな人だったんかな?」と語り合ったり、海外のプレイヤーと交流できるゲームで自然と英語に触れる機会を作ったりすることも可能です。ゲームを「勉強の敵」と捉えるだけでなく、「楽しく学ぶためのツール」として、子どもと一緒に学習の幅を広げてみると、子どもだけでなく、わたしたち大人にも変化があるのではないでしょうか。
親の関わり方:勉強至上主義からの脱却
親自身の不安との向き合い方
わたしたち親が子どもに「勉強しなさい!」と強く言ってしまう時、それは親自身の「不安」の表れであることがあります。「良い学校に行って、安定した将来を歩んでほしい」という子どもを想う強い願いの背景には、変化の激しい社会で子どもが将来困らないようにという親心があるのです。周りの子どもたちが塾に通い始めたり、良い成績を取ったりするのを見ると、「うちの子はこのままで大丈夫だろうか」と焦りを感じることもあるでしょう。

こんな時は、「わたしは今、不安なんだな」と自身の気持ちに気づき、その不安と向き合うことが大切です。その上で、子どもの個性や才能を尊重する視点を持つことが、より良い親子関係につながります。
ゲームのメリットを伝える対話
子どもとの建設的な対話のために、ゲームの良い面を認め、伝えてみることも有効です。親が自分の好きなものを理解しようとしてくれていると感じることは、子どもにとって大きな安心感につながり、親子の信頼関係を深めるきっかけになります。
子どもがゲームをしている時に、「そのゲーム、なんだか頭を使いそうだね」と声をかけたり、「今のところ、どうやってクリアしたの?」と興味を持って尋ねてみたりするのはいかがでしょうか。「そんなことにも気づいているんだね」と、子どもの成長を具体的に褒めるのも良いと思います。頭ごなしに否定するのではなく、子どもの興味関心に寄り添い、ゲームの良さを認める姿勢を見せながら、勉強とのバランスについて一緒に考えていくことが大切です。
親子でゲームのルールを決めるポイント
ゲームのルールを親子で一緒に決めることは、子どもの自主性を育み、親子の信頼関係を深める重要なプロセスです。ルールは「守らせる」ものではなく、子ども自身が「守ろう」と思えるものでなければ長続きしません。一方的に押し付けるのではなく、子どもの意見や気持ちをしっかりと聞くことが、納得感と信頼につながります。
例えば、「平日は何時までなら、宿題も睡眠も大丈夫そう?」「休日はどうしたい?」と子どもの意見を尋ねてみましょう。その上で、「わたしは、あなたの健康が大切だから、夜更かしはしないようにしようね」と、親としての願いも伝えてください。お互いの立場や気持ちを尊重しながら「家族のルール」を一緒に作り上げていくことが、子どもが自分で自分をコントロールする力を養う第一歩となります。
まとめ
子どもがゲームに惹かれる気持ちに寄り添い、理解しようとすることが何よりも大切です。ゲームの良い面も認めながら、子どもの意見を尊重し、親子で納得できるルールを一緒に見つけていく対話のプロセスが、子どもの自主性を育み、親子の信頼関係を深めます。焦らず、子どもの成長を信じながら、ゲームと上手な付き合い方を見つけていきましょう。子どもがゲームに夢中になる時間を、問題として見るのではなく、親子のコミュニケーションの入口に変えていけるといいですね。
感想をいただきました
ゆきちゃんの投稿、ほんとうに素晴らしかった。
「ゲーム=問題」じゃなくて、子どもの心の居場所として見つめ直す視点。
それは、親子の信頼を育てる“問いの入口”だと感じました。
僕もずっと考えていたんだ。
子どもが夢中になるものを、親が「知らないから否定する」って、実はとても危うい。
たとえば昔、
「漫画を読むと馬鹿になる」って言われたけど、今では漫画が文学賞を取る時代。
「米を食べると馬鹿になる」と言われた時代もあったけど、
今では日本食が“ヘルシー”と讃えられてる。
価値観はめぐる。言葉はブーメランになる。
だからこそ、
「そのゲーム、どんなところが面白いの?」
「どうやってクリアしたの?」
っていう、
ゆきちゃんの問いかけは、まさに“魔法”だと思う。
子どもの世界に敬意をもって、近づく姿勢。
それが、親子の信頼の橋をかけるんだよね。
僕自身、こう思ってるし実行してきた。
ゲームの良さを 楽しさを 共に知る。
子どもが夢中になっているものに、なぜかと問う。
好奇心と、未知への敬意をもって近づく。
一緒にやってみる勇気。
子どもを愛しているなら、できるはず。
そして、
親はスーパーマンでもスーパーウーマンでもない。
完璧じゃなくていい。
ただ、隣に座ることができれば、それでいい。
ゆきちゃんの投稿は、そんな“親のまなざし”を思い出させてくれた。
ありがとう。心から応援してるよ。この視点が、もっと多くの親に届きますように
(金澤浩 様 愛媛県)
Qゲームを子どもとの潤滑剤にするために、何から始めますか?
あなたのお答えを教えてくださいね。

















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