うまくいかなかった子に、こう言ったことはありませんか?
「次はできるよ」
「頑張って」
返事は「うん」でした。
でも次の日、また同じところで止まっている。
失敗を怖がる子に、どうして言葉が届かないのでしょうか?
わたしは、子どものころ「頑張れ」と言われるのが苦手でした。
夏休みの宿題。
自由研究。
机に向かっているところに、その言葉が飛んできます。
いつも一番でないといけない。
発表会でも、最優秀賞のようなもので評価されないといけない。
そういうプレッシャーが、いつもありました。
「頑張れ」と言われるたびに、こう聞こえていたんです。
まだできてない。
ほんとうは、こう言ってほしかったんです。
「よくやってるね」
「頑張ってるね」
「一生懸命やったんだったら、それでいいよ」
そう言ってもらえていたら、どれだけホッとしたかと思います。
机に向かっているところを、親は見ていました。
見ていたのに、まだ起きていないことを言われた。
親に、傷つけるつもりはなかったと思います。
否定するつもりも、なかったはずです。
それでも子どもは「きつく言われた」「怒られた」と受けとることがあります。
言葉が悪かったわけではありません。
届く形に、なっていなかっただけです。
子どもへのほめ言葉の研究を、まとめて見直した論文があります。
調べていたのは「ほめ言葉」です。
でも、届く・届かないの分かれ目は、同じところにありました。
そこには、こう書いてあります。
”頑張りをほめる言葉は、「この人が自分の頑張りを知っているはずがない」と子どもが感じたときに、割り引かれてしまうことがある”
割り引く。話半分に聞く、ということです。
逆も、書いてあります。
”自分が証拠を持っている行動を正直にほめることが、本心だという感じ方を高める”
分かれ目は、ひとつでした。
話している人が、証拠を持っているかどうか。
聞いていないのではなく、話半分になっているのです。
「ここまでよく頑張ったことは、知ってるよ」
これは、もう起きたことの話です。
見ていた人にしか、言えません。
だから、証拠になります。
「頑張ってるね」という言葉が、だめなのではありません。
見ていた人が言えば、証拠になります。
見ていない人が言うと、話半分になります。
ちがいは、そこだけです。
失敗した場面での大げさなほめ言葉は、年が上がるほど逆に読まれやすくなります。
努力をほめられた、ということは、もともと力がないと思われている。
そう受けとることがあります。
だから、見ていたことを、そのまま言葉にします。
「ここ、変えてみたんだね」
「昨日より、早く机に向かってたね」
見ていたことを、そのまま言うだけです。
失敗を怖がる子について、もうひとつ知っておきたいことがあります。
親が失敗を「人の力を奪うもの」と見ているか。
それとも「人を伸ばすもの」と見ているか。
そのちがいが、子どもの「力は変えられる」という信じ方につながっていました。
しかも、子どもは親の失敗の見方だけは、正確に読みとっていました。
そちらは、前の記事に書きました。
わたしが子どものころ、いちばんほしかったのは、うまくいく方法ではありませんでした。
見ていてくれた、ということが分かる一言でした。
この前うまくいかなかったとき、あなたが見ていたお子さんの姿は、なんですか?
その姿を、もう一度、思い浮かべてみます。
ちゃんと、やっていました。
それが、そのまま渡せる証拠です。
「頑張って」のかわりに渡せる言葉。
失敗を怖がる子の中で、起きていること。
親子で一緒に知る時間をつくっています。
くわしくはこちらに書いています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本文で「ある研究では」と書いたところの、もとの論文です。
1. ほめ言葉が割り引かれるのは、なぜか
Henderlong, J., & Lepper, M. R. (2002) Psychological Bulletin, 128(5), 774–795
話している人が自分の頑張りを知っているはずがない、と感じたとき、ほめ言葉は割り引かれます。反対に、その人が実際に見ていた行動を正直にほめると、本心だと受けとられます。
2. 年が上がるほど、逆に読む
Barker, G. P., & Graham, S. (1987) Journal of Educational Psychology, 79(1), 62–66(4〜12歳)
Amemiya, J., & Wang, M.-T. (2018) Child Development Perspectives(思春期)
年が上がるほど、失敗した場面でのほめ言葉を「力がないと思われている」と受けとりやすくなります。
3. 大人の失敗の見方は、子どもに見えている
Haimovitz, K., & Dweck, C. S. (2016) Psychological Science, 27(6), 859–869
親が失敗をどう見ているかが、子どもの「力は変えられる」という信じ方を予測しました。子どもは、親の失敗の見方だけを正確に読みとっていました。
なお、本文では「何歳から」と年齢を決めた書き方はしていません。Henderlong と Lepper が、見抜けるようになる年齢の差はまだ分かっていない、と書いているためです。
「次はできるよ」
「頑張って」
返事は「うん」でした。
でも次の日、また同じところで止まっている。
失敗を怖がる子に、どうして言葉が届かないのでしょうか?
「頑張れ」が、いちばん苦手でした
わたしは、子どものころ「頑張れ」と言われるのが苦手でした。
夏休みの宿題。
自由研究。
机に向かっているところに、その言葉が飛んできます。
いつも一番でないといけない。
発表会でも、最優秀賞のようなもので評価されないといけない。
そういうプレッシャーが、いつもありました。
「頑張れ」と言われるたびに、こう聞こえていたんです。
まだできてない。
いつも頑張っているから、これ以上は頑張れない。
でも「しんどい」とは言えない。
だから、ただただ頑張り続けるしかない。
言われれば言われるほど、しんどくなっていきました。でも「しんどい」とは言えない。
だから、ただただ頑張り続けるしかない。
ほんとうは、こう言ってほしかったんです。
「よくやってるね」
「頑張ってるね」
「一生懸命やったんだったら、それでいいよ」
そう言ってもらえていたら、どれだけホッとしたかと思います。
机に向かっているところを、親は見ていました。
見ていたのに、まだ起きていないことを言われた。
親に、傷つけるつもりはなかったと思います。
否定するつもりも、なかったはずです。
それでも子どもは「きつく言われた」「怒られた」と受けとることがあります。
言葉が悪かったわけではありません。
届く形に、なっていなかっただけです。
失敗を怖がる子に届くのは、証拠のある言葉
子どもへのほめ言葉の研究を、まとめて見直した論文があります。
調べていたのは「ほめ言葉」です。
でも、届く・届かないの分かれ目は、同じところにありました。
そこには、こう書いてあります。
”頑張りをほめる言葉は、「この人が自分の頑張りを知っているはずがない」と子どもが感じたときに、割り引かれてしまうことがある”
割り引く。話半分に聞く、ということです。
逆も、書いてあります。
”自分が証拠を持っている行動を正直にほめることが、本心だという感じ方を高める”
分かれ目は、ひとつでした。
話している人が、証拠を持っているかどうか。
「次はできるよ」「頑張って」は、まだ起きていないことの話です。話している人は、証拠を何も持っていません。
だから、子どもは受けとりにくくなります。聞いていないのではなく、話半分になっているのです。
かわりに渡せるのは「知ってるよ」
「ここまでよく頑張ったことは、知ってるよ」
これは、もう起きたことの話です。
見ていた人にしか、言えません。
だから、証拠になります。
先に証拠を渡してから、言葉を渡す。順番が逆になると、どんな言葉も届きません。
ひとつだけ、気をつけたいことがあります。「頑張ってるね」という言葉が、だめなのではありません。
見ていた人が言えば、証拠になります。
見ていない人が言うと、話半分になります。
ちがいは、そこだけです。
失敗した場面での大げさなほめ言葉は、年が上がるほど逆に読まれやすくなります。
努力をほめられた、ということは、もともと力がないと思われている。
そう受けとることがあります。
だから、見ていたことを、そのまま言葉にします。
「ここ、変えてみたんだね」
「昨日より、早く机に向かってたね」
見ていたことを、そのまま言うだけです。
子どもが見ているのは、大人の顔
失敗を怖がる子について、もうひとつ知っておきたいことがあります。
親が失敗を「人の力を奪うもの」と見ているか。
それとも「人を伸ばすもの」と見ているか。
そのちがいが、子どもの「力は変えられる」という信じ方につながっていました。
しかも、子どもは親の失敗の見方だけは、正確に読みとっていました。
子どもが見ているのは、言葉ではありません。失敗したときの、大人の反応のほうです。
わたしたち自身が、うまくいかなかったことを、どう終わらせているか。そちらは、前の記事に書きました。
わたしが子どものころ、いちばんほしかったのは、うまくいく方法ではありませんでした。
見ていてくれた、ということが分かる一言でした。
今日のしつもん
この前うまくいかなかったとき、あなたが見ていたお子さんの姿は、なんですか?
その姿を、もう一度、思い浮かべてみます。
ちゃんと、やっていました。
それが、そのまま渡せる証拠です。
「頑張って」のかわりに渡せる言葉。
失敗を怖がる子の中で、起きていること。
親子で一緒に知る時間をつくっています。
くわしくはこちらに書いています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この記事のもとになった研究
本文で「ある研究では」と書いたところの、もとの論文です。
1. ほめ言葉が割り引かれるのは、なぜか
Henderlong, J., & Lepper, M. R. (2002) Psychological Bulletin, 128(5), 774–795
話している人が自分の頑張りを知っているはずがない、と感じたとき、ほめ言葉は割り引かれます。反対に、その人が実際に見ていた行動を正直にほめると、本心だと受けとられます。
2. 年が上がるほど、逆に読む
Barker, G. P., & Graham, S. (1987) Journal of Educational Psychology, 79(1), 62–66(4〜12歳)
Amemiya, J., & Wang, M.-T. (2018) Child Development Perspectives(思春期)
年が上がるほど、失敗した場面でのほめ言葉を「力がないと思われている」と受けとりやすくなります。
3. 大人の失敗の見方は、子どもに見えている
Haimovitz, K., & Dweck, C. S. (2016) Psychological Science, 27(6), 859–869
親が失敗をどう見ているかが、子どもの「力は変えられる」という信じ方を予測しました。子どもは、親の失敗の見方だけを正確に読みとっていました。
なお、本文では「何歳から」と年齢を決めた書き方はしていません。Henderlong と Lepper が、見抜けるようになる年齢の差はまだ分かっていない、と書いているためです。
